牽引療法とは?
ここでは、頚椎椎間板ヘルニアの治療の一つである牽引療法について解説しています。
牽引療法とは
牽引(けんいん)とは、引っ張るという意味。つまり牽引療法とは、首を引っ張って痛みの緩和を目指す治療法のことを言います。
牽引療法は古代ギリシャ時代から行われていますが、現代でも、主に軽度の頚椎椎間板ヘルニアには効果的とされる治療法。正式な理学療法の一つとして、整形外科では一般的に行われています。
牽引療法のメリット
体への負担が少ない
牽引療法は、メスを使った外科手術とは異なり、体への侵襲がほとんどありません。もちろん入院の必要もないため、仕事や家事にも支障はなし。また、薬物療法とは異なり、薬による副作用の恐れもありません。
牽引を受け続けることでヘルニアが自然治癒することがある
軽度の頚椎椎間板ヘルニアの多くは、牽引療法を始めとする保存的療法を受け続けている間に、自然治癒すると言われています。牽引などによって血行が促進すると免疫力が上がり、免疫細胞が突出したヘルニアを食べて消してしまうから、との説があります。
牽引療法のデメリット
すべての患者が受けられる治療ではない
骨粗鬆症や骨軟化症など、骨に何らかの異常がある患者に対しては、牽引療法を行うことができません。全身衰弱がある患者に対しても、牽引療法は適していません。
症状が悪化することもある
頚椎椎間板ヘルニアから炎症に発展している症例においては、牽引療法を行うことができません。無理に牽引療法を行うと、逆に痛みが悪化することがあるからです。
牽引療法の費用の目安
牽引療法の費用は、保険適用後で1回あたり数千円です。定期的に治療を受ける必要があるため、月にかかる費用の総額は3~4万円程度と考えてください。
中には、病院のほかにも整体院やカイロプラクティック院で牽引を受ける方もいるようですが、病院以外で受ける牽引療法には保険が適用されません。
牽引治療を受けた方の口コミ
- 頚椎椎間板ヘルニアの治療で、定期的に牽引療法を受けています。治療を受けている間は、とても気持ちいいですね。治療後も痛みが緩和するような気がします。
- 牽引療法をしばらく受けているのですが、何だか、以前よりもしびれが多くなってきたような気がします。牽引療法をやめようかどうか、今度先生に相談してみるつもりです。
牽引療法の効果に関する科学的根拠
牽引療法の効果に関する科学的根拠は、まだ不十分と言われています。
確かに、牽引療法によって痛みの緩和効果を実感している患者も多くいますが、一方で、何ら効果を実感していない患者も少なくありません。中には症状が悪化してしまう患者もいるようです。
頚椎椎間板ヘルニアに対する牽引療法の効果については、今後の更なる研究が期待されます。
なお、カイロプラクティック院などにおける牽引療法について、厚生労働省が設置した「脊椎原性疾患の施術に関する医学的研究会」は、効果に対する科学的根拠に乏しいとの指摘を行っています。
カイロプラクティック院などで長期にわたって牽引療法を受けたにも関わらず、何ら効果を感じられない方は、ヘルニアとは異なる原因が潜んでいるかも知れません。首に痛みのある方は、カイロプラクティック院の前に、まずは病院を受診すべきでしょう。
まとめ
改めて当ページの内容を振り返ってみましょう。
- 牽引療法とは、首を引っ張ることで痛みの緩和を目指す治療法。
- 外科手術や薬物療法とは異なり、牽引療法は体への負担が少ない。
- 牽引療法を受け続けることで、ヘルニアが自然治癒することもある。
- 全身状態などを理由に、牽引療法を受けられない患者もいる。
- 牽引療法で症状が悪化する例も見られる。
- 月々の費用の目安は、保険適用後で3~4万円。
- 牽引療法の効果に関する科学的根拠は乏しい。
かつては頚椎椎間板ヘルニアの主流とも言えた牽引療法ですが、現在では、やや下火になっているようです。
確かに症状が改善する患者もいるわけですが、その効果については、まだ医学的な根拠に乏しいのが現状。信頼できるクリニックを見つけ、牽引療法の可能性も含めて自身に最適な治療法を選びたいものです。